僕は山崎慎平、今の会社に入社して5年になる。
僕には気になる人がいる、それは同じ会社の佐藤先輩だ。
僕が入社したばかりの頃、先輩は教育担当だった。
他の同期に馴染めずに孤立していた僕を先輩はいつも気にかけてくれた。それが恋の始まりだった。
先輩は結婚していて、子供が2人いる。
そんな先輩が男に興味あるはずがないし、ましてや僕のことなんて好きになってくれるはずがなかった。
でもある日、先輩との距離は一気に縮まったんだ。
その日僕は、いつも通り残業をしていた。
仕事が遅い僕は、どうしてもみんなのように定時で仕事を終わらせることができないでいた。
でもそんな残業の時、秘かな楽しみがあった。
「よっ!山崎!今日も残業か?」
声をかけてくれたのは憧れの佐藤先輩だ。
先輩はいつも、同じサンドイッチと缶コーヒーを買って、僕の残業に付き合ってくれる。
「はい、差し入れ!ちょっと一緒に休憩しよう」
「先輩、いつもすいません。」
僕は嬉しさもあったが、いつも申し訳なくて仕方なかった。
早く帰って奥さんや子供に会いたいはずなのに。
「気にすんな山崎、お前のこと心配なんだ。それにこんな広いオフィスに1人きりじゃ寂しいだろ?」
先輩の優しい言葉に、僕はキュンとした。
そして僕は、先輩が買ってきてくれたサンドイッチとコーヒーを手に取って少し休憩することにした。
「先輩、なんで僕のことそんなに気にかけてくれるんですか?」
僕のそんな言葉に、先輩はコーヒーを飲み干して少し黙った後に答えた。
「お前新人の頃よく泣いてただろ?同期に馴染めなくて、
仕事も上手くいかなくて、何度も俺のところに来て辞めたいって言ってたよな。
今でも心配でしょうがないんだ。一人にしておいたら、いつかどこかに行っちゃいそうで」
先輩は少ししょんぼりしながら言った。
いつもの明るい先輩とはどこか違って、僕の胸は高鳴っていた。
そして僕は自分の気持ちを伝えたくて伝えたくて、その気持ちは抑えきれなくなっていた。
「先輩がいてくれるなら...僕はどこにも行きません。先輩は憧れの人だから」
「俺が...憧れ?」
ポロっと出てしまった僕の言葉に、先輩は少し不思議そうな顔をして答えた。
僕はとんでもないことを言ってしまった。もう引き返せないのなら全て言ってしまおうと思った。
「僕...先輩のこと好きです。
新人の頃いつも優しくしてくれて、一人ぼっちの僕を...助けてくれて」
「そうか…」
先輩は少し困った顔をしていた。僕の恋は終わったんだ。
そう思ったら僕は涙を我慢できなくなり、泣きだした。
すると先輩は僕の方に寄ってきて、僕をぎゅっと抱きしめた。
「泣かないでくれ山崎…もうお前が泣いてるとこ見たくないよ…」
先輩は僕を強く抱きしめて言った。そして僕の涙を手でぬぐって優しく微笑んだ。
僕はその優しい笑顔に更に胸が高鳴って、思わず先輩の胸に顔を埋めた。
先輩の匂い、先輩の逞しく鍛えられた胸に、僕は興奮を覚えた。
「先輩…ごめんなさい…少しこのままでいさせてください」
「好きなだけいていいよ山崎。そのままで少し俺の話...聞いてくれるか?」
先輩の胸の鼓動が高鳴っているのが分かった。
「俺も...山崎と同じ気持ちなのかもしれない。
お前が入社してから、なぜかお前が気になって仕方なかったんだ。
でも、俺には妻も子もいる。いけない気持ちなんだって思っていつも否定してたけど...
今お前に好きだって言われて俺も正直にならなきゃって思ったんだ。山崎…俺もお前が好きだ」
「え…?」
先輩のまさかの言葉に、僕は困惑して顔をあげた。
すると先輩は僕の目をじっと見て、そしてキスをした。
憧れの先輩とキスをしている。そんな状況に僕は更に困惑して、すぐに唇を離してしまった。
「ごめんごめん!キスはまだ早かったかな?」
先輩は照れくさそうに笑いながら言った。
「いっ…いや!ごめんなさいびっくりしちゃって!
全然早くないです!むしろもっとしたいです!笑」
「そっか!じゃあもう一回」
僕たちはもう一度唇を重ねた。
今度は落ち着いて、お互いの気持ちをぶつけあって何度も...何度も...
そして先輩と僕は結ばれた。
それからもいろいろなことがあったけど、それはまた別の機会に...。
つづく
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